「心をくすぐらないもの」には頭もついていかない

ここに一人の男がいる。知識、教養は人並みだが、見るからに感じが
良く、話しぶりにも好感が持てる。言うことなすことすべて品位があり、
丁寧で、愛想が良くて・・・・・と、いわば自分を良くみせる才にたけた
人物だ。

 ここにもう一人の男がいる。知識が豊富で、判断力もたしかな男だ。
でも、さっきの男にあったような、自分をよく見せる才には欠けている。

 さて、どちらの男が世間の荒波をうまくわたっていけるだろうか。そう、
明らかに前者だ。装飾品をたくさんつけた人間が、自分を飾ろうとしない
人間を手玉に取るだろう。
 
 あまり賢いとは言えない人たち(全人類の四分の三くらいはそうじゃ
ないだろうか)の心をつかむのは、いつも外見だ。かれらにとっては、
礼儀作法や物腰や、応対のしかたがすべてなのだ。それ以上奥を見よう
とはしない。でも、それは賢人も似たり寄ったりなのだ。賢人だって、
目や耳に心地良くないもの、心をくすぐらないものに対しては、頭が
ついていかないものだ。